アルゼンチン「チェンソーマン」ミレイ
中央銀行解体、臓器売買合法化など過激公約で注目集めたミレイ氏。選挙演説では政府支出削減を訴え、チェーンソーを掲げて登場したことから「アルゼンチンのチェンソーマン」の異名をとりました。国民の圧倒的な支持で大統領に就任したものの、就任後まもなく自身の給与を大幅に引き上げたことが発覚。この行動は国民の反発を招き、支持率は急落。辞任を求める大規模な抗議集会も発生しています。
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チェーンソーマンキャラクターポチタ人形を持って選挙運動をしているミレイ氏 |
彼が大統領になれた理由:破綻寸前の経済
アルゼンチンでは、物価が急騰し、国民の4割が貧困状態に陥る深刻な経済危機が続いていました。ペソの価値は毎日下落し、食料品店やレストランでは「朝と夜の食事の値段が違う」と嘆く声も聞かれました。公式の為替レートは1ドルあたり365ペソでしたが、闇市場レートである「ブルーダラー」では1ドルあたり1000ペソを超えていました。もはやペソは紙切れ同然となり、「強盗が入ったけどペソは奪われなかった」という皮肉も飛び交うほどでした。
かつて豊かな国を蝕んだペロン主義の影
1890年代から1920年代にかけて、アルゼンチンはアメリカやオーストラリアと並ぶ一人当たりGDPを誇り、「裕福な国」として知られていました。しかし、わずか1世紀でその繁栄は終わりを告げ、左翼ポピュリズムの泥沼に陥落します。
この転換点となったのが、フアン・ドミンゴ・ペロン(1946~1955年)の登場と、その政策を受け継いだペロン主義者たちによる統治です。彼らは、公的医療や公共交通機関などの公共支出を拡大し、現金支給などのバラマキ政策を推進しました。
さらに、政府は都合で恣意的に為替レートを設定し、経済活動を統制しました。しかし、この固定為替レート制はペソの信認を失墜させ、インフレを加速させる悪循環を生み出すことになりました。
アルゼンチンに現れた“チェンソーマン”ミレイ:過激な公約で国民を魅了
2023年、アルゼンチン大統領選挙に立候補したミレイ氏は、常識を覆すほど過激な公約と発言で瞬く間に人々の注目を集めました。
彼は中央銀行爆破を主張、アルゼンチンペソをゴミに例えて廃止しドルを公式通貨にすべきだと提案しました。さらに、銃規制緩和、臓器売買合法化、地球温暖化は「社会主義者の詐欺」であるという主張まで飛び出し、世間を騒がしました。
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選挙運動にチェンソーマンを積極的に活用し、若者の注目を集めたミレイ氏 |
選挙期間中、彼は「チェーンソー」で政府支出、税金、不正腐敗を「切り裂く」と公約し、その斬新な表現は「チェーンソー・プラン」と呼ばれて瞬く間に拡散。若者たちは彼をアニメ「チェンソーマン」と合成したミームを作成して共有し、遊び心を持って選挙に参加し始めました。ミレイ氏はこの機運を巧みに利用し、ポチタ人形を手にイベント会場に登場したり、チェーンソーを持って演説を行ったりと、積極的に選挙戦を展開しました。
公約を守る男:称賛から批判へ
就任後、ミレイ氏は公約通りに18の政府省庁を9に削減し、契約職員1万5000人を解雇し、さらに7万人の解雇を発表しました。さらに、公共事業の凍結、地方政府への一部財政支援の中断、20万件以上の社会福祉プログラムの中断など、厳しい財政改革を実行しました。
これらの改革は、労働組合や社会団体から猛烈な反発を受けましたが、ミレイ氏は一切譲らず、公約実現への強い意志を示しました。厳しい状況の中でも果敢な改革を断行する姿に、多くの国民から称賛の声が上がりました。
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大統領と官僚の給与昇給が発表され、国民の間で怒りが広がっている |
しかし、称賛はすぐに批判へと変わります。
実は人に対して厳しく、自分に対して甘い男
ミレイ大統領就任からわずか3ヶ月で、アルゼンチンの貧困率は急上昇。国民生活が苦境に陥る中、衝撃的なニュースが飛び込んできました。ミレイ大統領自身が自分と閣僚を含む高官の給与を48%引き上げる文書に署名していたことが、野党下院議員のSNS投稿によって明らかにされたのです。
この給与引き上げは、2007年から2015年まで政権を握っていた前大統領が2010年に導入した役員報酬体系に基づく自動引き上げだったとミレイ大統領は説明しました。しかし、前大統領は「私が14年前署名した大統領令とは無関係だ」と反論し、ミレイ大統領に「署名したことを認め、換金したことを説明しろ」と激しく批判しました。
論争が激化する中、ミレイ大統領は人事管理大臣を「あってはならない失態」を犯したとして解雇し、自身と閣僚の給与昇給を撤回しました。しかし、批判は止まることなく、むしろ強まりました。解雇された人事管理大臣は、自身が大統領府からの指示に基づいて承認しただけであり、ミレイ大統領が最も弱い立場の人を犠牲にして責任を逃れようとしていると指摘しました。さらに、関連する大統領令文書にはミレイ大統領の署名が記されており、彼の説明は説得力に欠けました。
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ミレイ大統領の退陣を求めるデモ |
就任当初60%近くあったミレイ大統領の支持率は、この騒動で40%まで急落。国民たちは、生活苦の中で給与引き上げを行う大統領に対して怒りを表明し、彼の退陣を要求するデモが各地で起こっています。
3 コメント
こんな自分の壊したいものだけを壊す私利私欲にまみれた男はチェンソーマンではない。
返信削除でも、選んだの国民にも責任はある。
どう言う人を選挙で当選させるのかではなく、どう言う仕組みが人をそうさせるのかを考えたほうが良い気がした
返信削除我が国にも増税クソメガネという似たような男がいるので、身につまされる話だった
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