「チャイリー返還拒否で拘束」 中国裁判所、異例の生中継で波紋

 チャイリー返還拒否で拘束

中国では、結婚時に新郎が新婦に「チャイリー（彩礼）」と呼ばれる金銭を贈る伝統的な文化があります。近年、このチャイリーを巡って新郎新婦間でトラブルが頻発しており、中国の裁判所がチャイリーの返還を拒否した女性を拘束する場面を、異例にも生中継しました。

チャイリー返還を拒否し、拘束された女性と、その過程を生中継した中国裁判所

中国の結婚文化「チャイリー」

中国には、「チャイリー」と呼ばれる伝統的な結婚文化があります。チャイリーとは、結婚時に新郎側が新婦側へ支払う金銭で、地域によって金額や風習が異なりますが、数十万円から数千万円に達するケースも少なくありません。

近年、チャイリーの高額化が深刻な社会問題となっています。1980年代まではチャイリーによるトラブルは稀でしたが、中国経済の急激な発展に伴い、結婚式の豪華化や男女比の不均衡などが原因で、チャイリーの金額が急騰しています。

高額化するチャイリー：新郎側への経済的負担

 

チャイリーを受け取る中国女性

各大都市圏では、新婦の容姿によって数千万円ものチャイリーを要求されるケースも珍しくありません。また、新郎側が新婦側へマンションを用意しなければならない場合も多く、経済的な負担が新郎側やその家族に重くのしかかっています。

娘の人権を軽視する親たちの問題

 さらに問題なのが、チャイリーを娘の結婚資金だけでなく、老後の生活資金として捉える親の存在です。娘の結婚を単なる金銭的な取引と考えるこのような考え方は、娘の人権を軽視し、深刻な社会問題となっています。

「チャイリー」の高額化が招く悲劇と犯罪

900万円のチャイリーを返還しなかったため、女性を70回も刺した事件が中国ニュースで報道された

チャイリーの高額化は、婚約破棄や殺人事件などの悲劇も招いています。婚約直前に新婦側がチャイリーの金額を突然吊り上げ、婚約破棄に追い込むケースや、チャイリーの返還をめぐって新郎側と新婦側が衝突し、殺人事件に発展するケースも発生しています。

チャイリーの悪用は、組織犯罪にもつながっています。結婚詐欺グループは、偽の身分を装って新郎側と接触し、チャイリーを騙し取るケースが後を絶ちません。

四川省では、16歳の娘を25万元（約500万円）という高額なチャイリーで売ろうとした両親が娘に告発される事件も発生しました。これは、チャイリーの高額化が招いた恐ろしい現実の一つです。

中国政府、チャイリー問題に本腰！インターネット生中継で「制裁」

 チャイリーが中国社会の深刻な問題となっていることを受け、中国政府も異例の措置に踏み切りました。

 

中国裁判所のチャイリー返還過程の生中継は、中国で話題になっている

湖南省高級人民法院は、元彼との間に子供がいることを隠して結婚した女性が離婚後もチャイリーを返還しなかった事件で、女性を拘束し、その様子をインターネットで生中継しました。生中継は274万人が視聴しました。

裁判所は、チャイリー返還を拒否する女性に対して、公開の場で恥をかかせるという厳しい措置を取ったのです。

この措置に対しては、過剰な制裁ではないかという批判も上がっていますが、裁判所は、今後もチャイリー返還を拒否する女性に対しては同様の措置を取ると警告しています。

中国政府は、チャイリー問題の解決に向けて、法規制の強化やキャンペーンなど様々な取り組みを進めていますが、依然として様々な課題が山積しています。統計によると、2000年代以降に結婚した中国の女性の約80％がチャイリーを受け取っています。