鑑定士を嘲笑した女性

「この絵は、画家の画風を真似た粗悪な模造品です」

中国版鑑定番組「鉴宝」に絵を持ち込んだ依頼人は、専門家による偽物という鑑定を認めず、大声で反論しました。女性が正体を明かすと、鑑定士はもちろん、観客も驚きを隠せませんでした。

番組鉴宝で鑑定を受けている齐白石の孫娘
番組鉴宝で鑑定を受けている齐白石の孫娘


中国版「開運! なんでも鑑定団」

「鉴宝」は、中国国営放送CCTVで2003年10月に初放送された番組です。鑑定士は、中国国内で有名な中国美術専門家で構成されており、中国の古い美術品や中国伝統作品を鑑定します。

初回放送当時、中国国内では「パクリ番組だ」など論争が起こり、「番組自体が偽物のくせに何の鑑定だ」とか皮肉めいた批判も多くありました。

しかし、この番組で専門家が本物と評価した中国伝統絵画は、基本的には1億~10億円を超え、毎回登場する作品はほとんど最高値を更新しました。


齐白石の作品鑑定を依頼した女性

ある女性が、中国のピカソと呼ばれる齐白石の東洋画を持ち込み、番組に鑑定を依頼しました。絵画を鑑定した専門家たちは、「画家の画風を真似た粗悪な模造品」、「一目で偽物だと分かった」、「本物であれば最低でも3億円はするだろうに、残念だ」と口々に偽物であると断定しました。

女性は鑑定結果を受け入れず、何度も「もう一度見てほしい」と頼みましたが、専門家たちは最後まで「偽物である」と結論付けました。


驚きの展開:女性の正体

専門家たちが偽物であると最終結論を下すと、女性はついに怒りを爆発させ、驚きの真実を明らかにします。

実は、この女性は齐白石の孫娘だったのです。女性は「祖父が亡くなる前に私にくれた絵画で、家宝として大切にしている」と語りました。この発言には、鑑定士や司会者、そして観客も皆驚愕しました。

当時の鑑定士達
当時の鑑定士達

女性が本当に齐白石の孫娘であることが確認されると、番組に出演した鑑定士たちは、その鑑定力を疑う声で激しい批判にさらされました。


能力問題なのか、詐欺師なのか?

番組に出演した鑑定士の1人であるリウヤン(劉岩)には、鑑定士ではなく詐欺師だという批判が殺到しました。

2年前、劉岩は農民であるジュウン朱云兄弟が所有していた伝統絵画を、本物と非常に似通った精巧な模造品だと主張し、17万元(約367万円)で購入しました。

2年後、朱云兄弟は番組を通して、自分たちが17万元で販売した絵画が8700万元(約18億8千万円)で落札されたというニュースを耳にします。

劉岩(左)、劉岩が買い取った伝統絵画(右)
劉岩(左)、朱云兄弟の伝統絵画(右)


朱云兄弟は訴訟を起こしましたが、すべて敗訴し、劉岩は現在香港に住んでおり、番組出演だけでなく鑑定士としても活動を続けています。

この一件から、鑑定士たちが齊白石の孫娘が持ってきた作品が本物であることを知りながら偽物と判断し、その後安く買い取ろうとしていたのではないかと考える人も少なくありませんでした。


過去の鑑定作品への影響

鑑定士たちが能力を疑われるようになると、当然のことながら、彼らがこれまで鑑定してきた作品についても疑問が浮上し始めました。

彼らが本物と鑑定した作品はすべて、1億円を超える鑑定価格で取引されたため、もし鑑定が間違っていた場合、誰かが大きな損害を被っていることは明らかです。

しかし、中国伝統絵画を鑑定できる人は極めて少数であり、これまで彼らが鑑定してきた作品を再鑑定してくれる人もいないだけでなく、彼らは今でも自分の鑑定が絶対に正しいと主張しているため、真相を知る方法は無いと言われています。